定期収入を得るためのマンションの条件として
邱さんがあげたことが五つあります。
 

一つは駅に近い交通至便なところにあること
二つは住居用に建てられたものであっても、
事務所用に転用のできるものであること
三つは事務所にしても住居用にしても、
マンションのある町名が一見、高級そうに響くところにあること、
四つは建物が立派そうに見えること、
五つは建設会社が信用のある会社であること

以上五つでした。
 

そしてこういう条件を揃えたマンションは
赤坂とか渋谷とか六本木とか新宿に周辺にあるとのことでした。
いったいどういう人がそういうマンションで
仕事をするのだろうかと想像をめぐらしました。
当時、読んだ邱さんの作品を読み直すと
事務所用のワンルーム・マンションは
プロダクションとか税理士や設計士の事務所
あるいは不動産屋、小型商事会社のオフィスとして使われる
と書かれています。

そう言われても、ピンとこなかったのです。

私と妻は東京の地図を片手に邱さんから教えられたことを手引きに
歩きだしました。
ついその前までは、郊外の土地を求めて
都心から郊外に向いていた私たち夫婦は
一転、向きを変えて、
人がよく集まる方面に出かけ、
マンションを見てまわりました。
その結果、ワンルーム・マンションというのは、
一国一城の主たちの仕事場なのだな
ということがわかりました。